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♪♪De que manera te olvido'♪♪
どうして君を忘れられようか

 「旅情」と言う言葉が鉄道の駅から去ったのはメキシコも例外ではない。
 だが、メキシコの場合それは消えたのではなく「駅」から「バスセンター」に舞台を移して生き残っている。
 バスのことをメキシコでは「アウトブス」よりも「カミオン」と呼ぶのが一般的で、どの町もバスセンターは、旧市街の外れぐらいのところにあって、カミオネラという。
長距離バス  メルカド(市場)もメキシコの人々の生活臭を嗅ぐのによいところだ、だがそこは活力が漲っているのに対し、カミオネラには全ての要素が揃っている。  希望に溢れて旅立つ人、不安に慄いて到着する人、都会の人、田舎の人、金持ちと貧乏人、あらゆる人々が集まり散ってゆく。  複雑なメキシコの社会を、縮図のように眺めることのできる、唯一絶好の場所だ。
abordo
メキシコシティー北バスターミナル

 日本の5倍の国土のこの国の有料道路は20年前1,000キロに満たなかった。
 もともと社会主義国だから相当な高速道路でも無料だったのだが、それにしても短すぎた。
 そんな時代でも、人々の長距離移動の手段は、圧倒的にバスが多かった。
 人工密集地の殆どが、千メートル以上の高地にあるというこの国の地形が、鉄道では時間がかかり過ぎたし、諸物価が統制されている中で、国際水準の航空運賃は余りにも高すぎた。
 そして今や有料道路は7千キロに及び、バスの優位は不動のものになり、鉄道は民営化が進み、貨物専用になったところもある。
 相当裕福な人々でも自費の場合は滅多に飛行機は使わない、バスの3、4倍かかるからだ。
 家族丸ごと移動する場合は自家用車、人数が少なくて有料道路代が割高につく場合はバスを使う。

私の町はメキシコのほぼ中心に有るが、そこからの料金(00年6月)を下表で見てみると:
行き先 距離(km) 所要時間(hr) 料金(円) 参考
Mexico city 513 7 2,500 エコノミー
6 3,000 デラックス、ノンストップ
6 4,000 超デラックス、ノンストップ
1 11,800 飛行機
Acapulco(最南端のリゾート地) 924 11 4,500 デラックス、ワンストップ
Nuevo Laredo(北の国境の町) 815 10 4,300 デラックス、ノンストップ
Tijuana(北の国境の町、太平洋側) 2,535 36 10,450 エコノミー

taquillasPano

taquilla  カミオネラに入ると、各バス会社のカウンターがずらりと並んでいる。 メキシコシティーの場合、同じ会社でも方面ごとに幾つかのカウンターを置いているところもあるから、全部で30から40はある。
 行き先とおよその発車時刻を告げると、座席の空き具合をモニターで見せてくれる。
 メキシコシティーヘ行く場合、所要時間が6時間ぐらいだから、夜行の本数が多く、21時以降は午前1時迄30分おきに有り、しかも同じ時間帯に3〜4社が同時に発車するから、まえもって切符を買っておかなくても大抵どれかには乗れる。
 ちなみに運転手はひとりっきりで、途中10分程休憩するだけだ。 夜行バスの時はひたすら居眠りをしないでくれと祈るばかりだ。


espera  待ち合い室には軽食のとれるスナック、靴磨きのスタンド、電報と長距離電話のサービス、薬屋、玩具や等々、空港サービスのうち必要最小限のものは揃っている。  医務室も有り、酔い止めは無料でもらえる。
 椅子も、床も決して綺麗とは言えないが、係りの人が頻繁に掃除しておりゴミは少ないし、物乞いもいない。  ただ、尻尾を後ろ足の間に挟み込んだ野良犬が、こぼれた食べ物を拾って歩く。
 トイレは大きなカミオネラでは、有料と無料が有る、無料の方はかなり汚い。  面白いのは有料の方(写真突き当たり)は10円程度なのだが、公式の領収書がもらえるところもあり経費で落とす事ができる。
 乗車15分ぐらいまえになるとアナウンスがあり、磁気チェックのゲートを通って乗り場に入る。
 飛行場同様、荷物の多い人にはポーターのサービスがある。


 初めて利用する人は、乗車場に居るバスの多さに圧倒される。 下の写真はメキシコシティー北カミオネラだが、数えるのも難しいほどだ。
 自分の乗るバスは停まっているところの柱の番号とか車両番号で探すが、電光表示板の有るところ、乗車券に書き込んでくれるところなど、カミオネラによっていろいろだ。  大きなカミオネラでは乗車券を買った時に待ち合い室を指定されるので、そこから乗車場に入ればその近辺におり、バス会社名と行き先で探せば割合簡単に見つかる。
 発車時刻は割合きちんと守られ、私の経験では10分以上遅れたことはない。
salida

camion  バスは大別すると上中下3クラスあり、上の座席は縦3列で定員は21人しかなく、膝から下を支えるクッションがついていて、スペース、リクライニングとも飛行機のビジネスクラス以上だ。
 このクラスには女性の添乗員がいて、飲み物と、サンドウィッチ程度の軽食のサービスがある。
 ちなみに、他のクラスでも、有料道路の料金所や小休止するところで、近所のおばちゃん達が乗り込んで来て、ポテトチップス程度のものとコーラなどを売っていく。
 中は大体40席程度で、座席の幅はゆったりとは言えないが、前後寸法は楽に足が組めるほどあり、リクライニングも飛行機のビジネスクラス以上倒すことができる、ビデオも数カ所についている。
 一番下のクラスは50席ぐらいで、ちょっと窮屈だがリクライニングはあり飛行機で言えばエコノミークラス程度だ。
 この他にもバラエティーはあって、写真のように車両の中程にキッチンがあり、飲み物のサービスのあるものもある。

 雨季に入ったばかりのメキシコシティーの朝は小雨が降っていた。
 ここのカミオネラは、マンモス都市だけあって、東西南北4箇所にあり、夫々地下鉄でつながっている。
 下の写真は、一番大きい北のターミナルで、端から端迄歩くと、ゆうに5分はかかる。
 ここへのアクセスは、地下鉄、バス、タクシーのほか、自家用車でも来られるよう駐車場もある。
entrada
taxis  到着した人々は、思い々々の方角に散っていき、やがてマンモス都市に吸い取られてしまう。
 ここのタクシーは、鉄道の構内タクシーのようになっており、乗る前に乗車券を買うシステムなので、土地不案内な人には安心出来る(註:これは空港でも同じ)
 ただ何処にも抜け目のない人はいるもので、運転手によっては同じ方面の客を相乗りさせるのがいて、乗り込んでもすぐには発車しない場合がある。
 早くも大都会のこすっからさを味あうこととなる。
taquillasdetaxi

 私には、バスに乗る度に感じる解けない疑問がある。
 それは、お喋り好きなメキシコの人々が、バスの中では何故か寡黙になり、目的地迄ひたすら寝て行くのだ。
 これは夜行バスだからではない、昼間でもバスに乗り込むと全ての窓にカーテンが引かれており、これをあける人は非常に少ない。
 飛行機の中ではそばに居るのがいやになるくらい喋り続ける彼等だが、何故かバスの中では静かなのだ。
 明るくふるまうメキシコの人々も実は孤独なのだという、やはりバスの旅には彼等に旅情を感じさせるなにかがあるのだろうか。